今回は手付金、諸掛(しょがかり)についてです。前回に引き続き、商品売買取引の基本となります。新たに学ぶ勘定は前払金(資産)、前受金(負債)、発送費(費用)です。 それではいきましょう!
1.商品代金の前払い
商品を購入するにあたって、代金の一部を手付金(内金)として支払うことがある。手付金を支払うことにより、後で商品を受け取る権利が生じたことになる。
この権利の増減を前払金勘定(資産)に記入する。
・仕訳(手付金を現金で支払ったとき)
借方科目:前払金:*** 貸方科目:現金:***
(例)
1.6月2日、A社は、仕入先B社に商品1800円分を注文し、手付金として現金360円を支払った。
2.6月9日、A社は、上記1の商品を受け取った。代金は手付金を充当し、残額は掛けとした。
1.手付金の支払いの仕訳
借方科目:前払金:360円 貸方科目:現金:360円
商品1800円を注文したが、これは「簿記上の取引」に該当しない。注文だけでは、資産・負債・資本・収益・費用のどの勘定にも関係しないと考えるので該当しないことになる。
手付金360円を現金で支払ったことは「簿記上の取引」に該当するのでこれについては仕訳を行う。
- 前払金は資産に該当し、資産の増加のため借方科目欄に前払金360円を記入する。
- 現金は資産に該当し、資産の減少のため貸方科目欄に現金360円を記入する。
2.商品の受け取り(商品の仕入)の仕訳
借方科目:仕入:1800円 貸方科目:前払金:360円、買掛金:1440円
商品1800円を受け取ったため、仕入勘定の借方に記入をする。また、商品を受け取ったことにより、商品を後で受け取る権利がなくなったため、「前払金」360円が減少したことになる。
商品代金1800円に前払金360円が充当されたので、残りの代金は1440円(=1800-360)になる。今回は「掛けとした」となるので、買掛金勘定の貸方に記入をする。
- 仕入は費用に該当し、費用の発生1800円は借方科目欄に仕入1800円を記入する。
- 前払金は資産に該当し、資産の減少360円は貸方科目欄に前払金360円を記入する。
- 買掛金は負債に該当し、負債の増加1440円は貸方科目欄に買掛金1440円を記入する。
・商品代金の前受け
商品を販売するにあたって、代金の一部を手付金(内金)として受け取ることがある。手付金を受け取ることにより、後で商品を引き渡す義務が生じる。この義務の増減を前受金勘定(負債)に記入する。
(例)
1.6月6日、A社は、得意先B社より商品3200円注文を受け、手付金として現金700円を受け取った。
2.6月13日、A社は、上記1の商品をB社に引き渡した。代金は、手付金を充当し、残額は掛けとした。
1.手付金の受け取りの仕訳
借方科目:現金:700円 貸方科目:前受金:700円
商品3200円の注文を受けたが、これは「簿記上の取引」に該当しない。現金で受け取った手付金700円のみの仕訳を行う。
2.商品の引き渡しの仕訳
借方科目:前受金:700円、売掛金:2500円 貸方科目:売上:3200円
商品3200円を引き渡した(=販売した)ため、売上勘定に記入する。また、商品を引き渡したことにより、商品を後で渡す義務がなくなったので、前受金700円が減少したことになる。
商品代金3200円に前受金700円が充当されたため、残りの代金は2500円(=3200ー700)となる。今回は「掛けとした」とあるため、売掛金勘定の借方科目に記入をする。
- 売上は収益に該当し、収益の発生3200円のため、貸方科目欄に売上3200円を記入する。
- 前受金は負債に該当し、負債の減少700円のため借方勘定欄に前受金700円を記入する。
- 売掛金は資産に該当し、資産の増加2500円のため借方勘定欄に売掛金1440円を記入する。
2.諸掛
簿記では、商品の購入や仕入先からの送料などの費用を諸掛という。
・仕入諸掛
商品の購入にあたってかかる仕入先からの送料などの費用を仕入諸掛という。
仕入諸掛は、商品を購入するためにはどうしてもかかってしまうものなので、仕入原価に含める。つまり、商品を購入したときに、仕入勘定の借方に記入する額は、商品本体の金額と仕入諸掛の合計の額とする。
商品の仕入原価=商品本体の金額+仕入諸掛
(例)A社は、仕入先C社より商品1400円を仕入れ、代金は掛けとした。なお、C社負担の引取り運賃200円を現金で支払った。
仕訳
借方科目:仕入:1600円 貸方科目:買掛金:1400、現金:200円
「取引運賃」は商品を引き取るまでの運賃のことである。(送料)
商品の仕入原価:1400円(商品本体の代金)+200円(仕入諸掛)=1600円
- 仕入は費用に該当し、費用の発生1600円を借方科目欄に仕入1600円を記入する。
- 買掛金は負債に該当し、負債の増加1400円を貸方科目欄に買掛金1400円を記入する。
- 現金は資産に該当し、資産の減少200円を貸方科目欄に現金200円を記入する。
仕入諸掛を発送費勘定や支払運賃勘定に記入しないように注意
・売上諸掛
商品の販売にあたってかかる得意先への送料などの費用を売上諸掛という。送料などを支払ったときには、発送費勘定(費用)の借方に記入する。
(例)
1.A社は、得意先B社に商品2700円を販売し、代金は掛けとした。なお、A社負担の発送運賃300円を現金で支払った。
2.A社は、得意先D社に商品3600円を販売し、送料400円の合計額を掛けとした。また、この商品を運送業者に引き渡し、送料400円を現金で支払った。
1.送料を得意先に請求しないケースの仕訳
借方科目:売掛金:2700円、発送費:300円 貸方科目:売上:2700円、現金:300円
支払った発送運賃(送料)300円は、発送費勘定の借方に記入する。
- 売掛金は資産に該当し、資産の増加2700円を借方科目欄に売掛金2700円を記入する。
- 発送費は費用に該当し、費用の発生300円を借方科目欄に発送費300円を記入する。
- 売上は収益に該当し、収益の発生2700円を貸方科目欄に売上2700円を記入する。
- 現金は資産に該当し、資産の減少300円を貸方科目欄に現金300円を記入する。
2.送料を得意先に請求数ケースの仕訳
借方科目:売掛金:4000円、発送費:400円 貸方科目:売上:4000円、現金:400円
商品代金3600円と送料400円との合計金額4000円を掛けとしている。(得意先に商品代金とともに祖送料を請求している。)この場合、4000円を売掛金勘定の借方に記入するとともに、売上勘定の貸方に記入する。支払った発送運賃(送料)400円は発送費勘定の借方に記入する。
- 売掛金は資産に該当し、資産の増加4000円を借方科目欄に売掛金4000円を記入する。
- 発送費は費用に該当し、費用の発生400円を借方科目欄に発送費400円を記入する。
- 売上は収益に該当し、収益の発生4000円を貸方科目欄に、売上4000円を記入する。
- 現金は資産に該当し、資産の減少400円を貸方科目欄に、現金400円を記入する。
ポイント
どちらのケースも、支払った送料は、発送費勘定に記入をする。なお、発送費勘定の代わりに、支払運賃勘定を用いることもある。(勘定科目の違いだけで意味は同じ)
3.売掛金元帳と買掛金元帳
・売掛金元帳
得意先は増えてくると、売掛金の管理が難しくなってくる。売上金勘定の残高を見ても、得意先ごとの売掛金の金額がわからないため、間違った金額を請求してしまったり、請求忘れをしてしまう危険性がある。
そこで、総勘定元帳の売上金勘定とは別に、得意先ごとの売掛金の増減を記入する勘定を設けることがある。例えば、得意先がB社・C社・D社の3者だった場合、「B社勘定」・「C社勘定」・「D社勘定」を設けて、各社に対する売掛金の増減を記入していく。
このような得意先ごとの売掛金の増減を記入する勘定をまとめて売掛金元帳(得意先元帳)という。
・買掛金元帳
買掛金についても同様のことが言える。買掛金勘定の残高を見ても、仕入先ごとの買掛金がわからないため、間違った金額を支払ってしまったり、支払忘れをしてしまう危険性がある。
そこで、総勘定元帳の買掛金勘定とは別に、仕入先ごとの買掛金の増減を記入する勘定を設けることがある。
このような勘定をまとめて買掛金元帳(仕入先元帳)という。
- 補足
- 総勘定元帳の売掛金勘定や買掛金勘定は、売掛金元帳や買掛金元帳の各勘定の全体をまとめた勘定と見ることができるため「統制勘定」と呼ばれることがある。
- 売掛金元帳や買掛金元帳の各勘定には、相手の社名が用いられることから「人名勘定」と呼ばれることがある。
- 売掛金元帳や買掛金元帳を設けずに、総勘定元帳の中に人名勘定を設けることがある。
今回は以上です!
仕事の都合上、早くても家に帰ってこれるのが23時くらいで、早起きができず…。早く帰って来れる日に寝かしつけしながら早く寝ても夜泣きのタイミングにばっちり合うので、復習するタイミングがなかなか作れずにいます…。早起きに関しては意志の弱さなので頑張りたいところです…。また次回も頑張ります!
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